pangaea doll  鏡月 玖璃子

10年前の作品とは思えないエモさ。エモいというのは「落ち着く」というものをもっているもので、儚さと落ち着きがあるものかななんて思ったりする。

 私は私のために、私、一人のために、一人孤独と思い、

一人哀しいと知る。この感情、連呼する私という言葉に何の意味があるのだろう。

私もこのフレーズにずきゅんと来た。今「夜を駆ける」yoasonbi や「白日」king gnuとポップス界はこの深淵にようやく10年越しについてきた。

キリスト教に洗礼を受ける前、オックスフォード大学から戻ってきた鏡月玖璃子さんは

何を思ってこれを書いたのか想定がつかないけれども、彼女の孤独と愛の期待はこの頃は若くて初々しさがあって、今のエモいポップスから入った子はpangaea dollでも彼女の哲学に

追いつくか分からない。Iconographは更にレベルがあがって、類稀なる誠実な病は名作。

けれども彼女は今度の作品は更に気に入っていると話していた。限定で公開された制作秘話は彼女の壮絶な人生が詰まっていた。


二人きりの小世界を望んでいたのね、ずっと誰かと。だけれども宇宙にいつも放り出されるの、私の愛は。結局は見渡すように愛していかないといけないの、傷ついた人、孤独な人、全てに隣人愛ね(鏡月玖璃子談)


パンゲアドールも出世を本来は見込める作品だった。けれども、新しい恋人がこの本を編集した元恋人への嫉妬が強くてこの本を読まずに批判をした。当時は新しい恋人が将来を約束してくれたので言う通りに聞いてしまったという話。時代に合っていないと当時投資家だった彼からの発言は影響力が強く、段々と前の作品を忘れて、新しい作品Iconographの初稿のほうが評価が高くなって、パンゲアドールを捨ててしまった。

けれども、この作品は素晴らしいと思う。今の自殺ブームを予言したような作品。


主人公の佐藤翔子は「ある幻想」が見えていた。症状は訪れているけれども病気として認められない。

(HPVワクチン被害者のように)恋人のムラジは一生懸命彼女の救済を考えるが、医者も見捨てて世間も見捨てていく。そして恋人のムラジはある病気を見つける。「パンゲア症候群」という病気だった。共通の幻想を見て、夢現で自殺してしまうという病気で、

共通の幻想とはパンゲア大陸をモデルにしている。とにかく描写が美しい。難しい漢字もこの作品は多いけれども、美しくて耽美。2010年当時は難解と評価された作品だけれども、今の時代なら読みやすいのではないかと思う。ある意味、今の作品はほとんど死が多い。

鬼滅の刃も死んでしまうし、転生系も増えて、ポップスも儚いものが多くてみんなヒットしている。けれども2010年は真逆で、村上春樹に慣れた人達や当時の人には難しかったのかもしれない。


佐藤翔子は絵を描いていた。それがパンゲア症候群と思われる人と同じ幻想だという事に

ムラジは気づいていたが、佐藤翔子はある日姿を消してしまう。


中盤から何処から発症したのか、それは翔子の父親の事故死、家族崩壊から竜が訪れて(想像と現実のはざま)翔子は

これを描いてみようと思うが、画力が追いつかず作品から離れてしまう。

読んでいる間に私も幻想と現実の区別がつかなくなって


ラストは最高だった。鏡月さんは何をこの時思ったのか想像は出来ない。この時はきっと

この作品を監修した担当を愛していたと思うし、恐らくずっと愛していたのだろうけれども、段々と男女の愛じゃなくなっていく。この現実を知った鏡月さんが今の新しい鏡月さん。 ずっと誰にも話せず苦しいまま過ごしたけれども、猫のアダムと出会えてよかったと

話す鏡月さん。今執筆しているのでラストなのかもしれないと、アダムと一緒に

将来は天国に行きたいと死を仄めかす言葉は私は寂しくてたまらない。彼女は名誉よりも

愛を求める人で、それを愚かだと思っている。そんなことないよと誰か花束をあげて


夜を駆ける→https://eve0703.themedia.jp/posts/11069234







Ameli_i

ほぼ鏡月玖璃子さんのファンサイト化🎀 もう少し自分を立て直せたら私のことも 書きたい